11月7~11日 ベトナム・ミャンマー視察の報告

 11月7~11日、技能実習生制度の職種に「介護」を追加する「法制化」の動きを受け技能実習生の急増を続けるベトナムと「アジア最後のフロンティア」と言われるミャンマーを視察しました。

 

今回の視察の目的です。

  1. 両国の技能実習生候補者の実態、教育システムの整備状況と介護人材の送り出しに向けた準備状況について把握する。
  2. パートナーとなる、送り出し機関や日本語学校の要件とこの選抜の物差しを探る。
  3. 医療・介護のネット教育ソフトを持参し、このプレゼンを通じて、ケアeトレーニング」を活用した、現地での介護学習の有効性と実現可能性を探る。

 

11月7日~11日 ベトナム・ミャンマー視察日程

1.ホアンロン人材派遣株式会社(ベトナム・ハノイ)
・1999年に事業認可を受け、現在では、ベトナムを代表する人材派遣会社の一つで、優良派遣企業証明書A1を取得。台湾、オーストラリア、中東、ロシアなど約20,00名の熟年労働者、技能実習生を派遣してきている。2012年より、日本事業部を本格稼働させ、日本に600人近くの技能実習生を送り出している。
・技能実習生は、ベトナム国内の主に農村部で候補者を募集し、第1次の社内選考を経て、合格者は、全寮制のホアンロン教育訓練センターで4~6か月、日本語や日本の文化、習慣、職場のルール、マナー、労働安全などに関する教育を受け、派遣先企業の選抜試験に臨んでいる。寮は整理整頓が行き届いており、授業風景も拝見させてもらったが、挨拶もしっかりしており、目を輝かせた20代前後の若者が熱心に日本語を学んでいた。

・尚、ホアンロン教育訓練センターでは、台湾に派遣する「家政婦コース」も開設されており、既に、年間40人程度(3年就労)を派遣している実績がある。

2.株式会社ITM(ベトナム・ハノイ)
・日本向けに派遣される技能実習、技術者への教育を主事業とし、ベトナムの人財教育分野のパイオニア的な存在。毎年1,000人近くの技能実習生を日本に派遣している。ハノイに2か所、ホーチミンに1か所の教育センターを有し、日本にも5つの駐在事務所を開設している。訪問した日本語センターのセンター長は、日本企業のリタイヤ組の日本人であった。
 ハノイ工業大学の敷地内に位置し、派遣する技能実習生は同大学の学生や卒業生も多く、質の高い教育を受けているのが特徴で、日本語の習得も早いそうだ。
・技能実習生の募集は、まずはハノイ郊外の農村部から30~40名を募集し、1次面接で13名程度を選抜。その後、2週間ほどで10人に絞り込み、4か月の全寮制の教育センターで教育を受ける。4~6か月で日本語検定N5レベルを目指しているそうだ。
・担当者によると、技能実習生は、残業が多い仕事を選ぶ傾向が強く、日本の3年間の実習期間内で、250万円~300万円を貯めることが目標。ベトナム国内での事前講習の授業料等の支払いに伴う、借り入れを精算しても、手元に、200万円強が残る計算をしているのが一般的だそうです。

3.株式会社J-SATコンサルティング(ミャンマー・ヤンゴン)
・ミャンマー在住20年の西垣 充さんが1998年に設立した総合人材紹介会社。1万人を超える大卒ミャンマー人材が登録し、ミャンマーに進出する日系企業の8割以上に紹介し、ミャンマーNO1の登録者数と実績を誇っている。スタッフは110名で、日本人が7名従事している。
・今回の視察では、ミャンマー医師会の施設に併設した日本語と介護を学ぶ教室を視察した。J-SATは、現在のミャンマーの平均年齢が27歳と若いが、早い少子化、未婚女性の増加で、10年~20年後に急速な高齢社会が到来し、老人福祉が課題にならざるを得ないと、介護人材の育成を本格化させている。30代の女性の未婚率は、日本よりも高い。
 2015年7月に試行的に第1期の介護士育成クラスを開設し、2016年2月に第2期生を募集し、同年12月には第3期生を募集する計画とのことだ。
 第2期生は、28名の応募でスタートしたが、日本の介護人材に技能実習生制度の法制化の遅れから、受講生が他国への派遣を希望し、現在の在籍者は、9名。そして、これらの在籍者を6~8月まで日本で研修させ、ミャンマー人の適性を検証している。

 又、J-SATは、母国に戻った優秀な人材の確保を念頭に、近々、介護施設を作る予定だそうだ(西垣さん談)。    
・授業風景も拝見させていただいたが、ミャンマー語の文法が日本語と同じということもあり、驚くほどに、日本語の習得が早い。高齢者を大切にする文化性も感じられた。

4.アリマテック(ミャンマー・ヤンゴン)
・2012年に設立された、ミャンマー人技能実習生送り出し機関。女性の孤児院との出会いがきっかけで設立したインターナショナルスクールが前身。現在は、私立の高校、中学、小学校、幼稚園も経営されている。日本人の有馬 慎二さんがCEOで、ミャンマー人の連れ合いと経営されている。これまで、技能実習生として、500人を日本に送り出している。人材募集は、98~99%が農村部からで、実習生の30~40%を大学生が占める、ただし、ミャンマーの大学の約50%が通信教育。通信大学とは名ばかりで、1年間に10日間授業があるだけ。その間、通信教育があるわけではない。試験のために塾に行かなければ卒業できないようだ。
・ここ1,2年のうちに、無料老人ホームを開設し、日本語研修センターを併設。そこに介護クラスも設置計画だそうだ。日本語検定N4を目指す。
・技能実習生の多くは、渡航前の講習費用等を自前で捻出する。驚くほどに高利のローン制度を利用している現状もあると嘆いていた。

5.オールアクセスミャンマー(ミャンマー・ヤンゴン)
・2014年に設立された、ミャンマーの技能実習生送り出し機関。ヤンゴン近郊を中心に候補者を募集している。
2017年4月に訪日する技能実習生候補者の授業を参観したが、候補者のほとんどがヤンゴン近郊の女性。しかも、10代後半から30代後半と年齢も幅もあった。既に半分以上が、日本での実習先も決まっていた。

・又、同施設には、福岡のFLA(日本語学校)と業務提携する、留学のための日本語学校も併設し、25人の生徒が学んでいた。4~6か月、ここで日本語を学び、日本の日本語学校(1~2年)を経て、専修・専門学校や大学への進学を目指すという。授業を参観し、日本の介護職の業務内容をお伝えしたうえで、急遽、教室で応募希望を募ったところ、4,5人の方から、魅力を感じるとの好反応があった。

6.日越大学(ベトナム・ハノイ)
・この9月9日に開校した、日越大学の古田 元夫学長を表敬訪問した。日越大学は、ベトナム国家大学ハノイ校の7校目の傘下大学で、大学院修士課程(2年)がスタートし、70名の第1期生が、6つのプログラム(公共政策、ナノテクノロジー、地域研究、社会基盤、境工学及び企業管理)で学んでいる。
・古田学長からは、日越大学への奨学金提供等の寄付をお願いされた。
・古田学長は、日越友好協会の会長にも就かれており、当事業団が、国際的な介護人材育成のプログラムを具体化し、日越協力の懸け橋となることを誓い、今後の協力をお願いした。