社会福祉法人 青森社会福祉振興団の視察報告

 12月2~3日、青森県むつ市の社会福祉法人 青森社会福祉振興団(青森県むつ市十二林11-13)を訪問。中山 辰巳専務理事ほか同振興団の皆さまのご案内で、各施設を視察した。又、同振興団の海外人材の積極的活用など、県外、海外など福祉の未来を見据えた事業の展開について、意見交換をさせていただいた。

1.施設見学

 

・社会福祉法人 青森社会福祉振興団は、1975年4月、下北半島、むつ市に「特別養護老人ホームみちのく荘」を開設。以降、「未来に向かって、確かな福祉を」を合言葉に、地域に根を張った、介護と医療とが融合した総合的な福祉事業を展開し、着実な前進を遂げていた。
・中山専務理事によれば、以下のような介護をとりまく現今の環境を踏まえ、介護現場、管理現場のICT(information communication technology),IoT(internet of things)
化,ロボットの活用など先進的な取り組みを進めていた。


A.深刻な人材不足と質の低下
      ①介護職②看護職③調理職
B.2025年問題の加速化
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※介護現場・管理現場をすみやかにICT化・IoT化を促進する
※AI(人口知能)によるビッグデータ化
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      ①利用者のケアの高品質化
      ②労働生産性の向上?介護の質・生活の質
      ③業務の効率化・ペーパーレス化の実現

 

・今回の視察では、こうした実証事例として、モバイル映像(シルエット)・予測型見守りシステム(施設モデル)の使用状況と通知確認業務の負担軽減、天井走行リフトの導入での効果(腰痛予防・移乗介護の負担軽減、事故リスク軽減、虐待防止等)を確認することができた。
・みちのくクリニック(内科・リハビリテーション科)は、CTスキャン・レントゲン室を持ち、外来だけではなく、訪問診療も実施。在宅支援の各種サービス機能、資料館を併設していた。この資料館は、日本における現代版画の草分け的な存在である、青森市生まれの関野 準一郎の作品を中心に、『まるめろ美術館』として地域に開放され、住民に親しまれていた。

・又、ディサービスは、介護予防型、一般型ともに利用できる、新しいタイプの自己選択型:総合施設(シアター、娯楽、カルチャーが専用の部屋で楽しめ、コンビニもある)。フードセンターは、HACCP対応の真空調理システムを導入し、食材はできるだけ下北産のものにこだわった食事提供にしていた。

2.外国人介護人材の積極的活用~グローバル人材の育成の取り組み


1)EPA(経済連携協定)を活用し、外国人介護福祉士候補生をインドネシア(2009年)、ベトナム(2014年)から受入れてきた。
2)又、2014年日越医療・福祉事業協定の調印を経て、フエ事業所を開設し、ベトナムフエ医科薬科大学と提携した「介護人材養成コース」(1年)を開設。

・2015年10月に1期生を募集し、この10月に22名が卒業。
 →EPAベトナム第5陣もしくは法制化された技能実習生制度を活用した来日に向け、フエ中央病院で、アルバイトしながら、日本語能力試験N3レベルの取得に向けた学習を続け、一日も早い日本での就労機会を心待ちにしている。
・2016年10月に2期生の授業が開講(17名)。
・ベトナムに続き、をインドネシア、ドイツでの「介護人材養成コース」の開設を準備し、海外に福祉の未来を見据えた事業を展開。将来は、介護の在宅支援サービスの拠点づくりも展望している。
・アジアの急速な高齢化が想定される中で、『独自の「日本的介護」のブランド化~「おもてなし介護」とパッケージ化されたビジネスモデル~「まるごとのサービス」の輸出を念頭に、「日本式介護」のISOに準じた国際的な基準の確立を目指す。』と力強く語っていた。(中山 専務理事)

3.特徴的な取り組み


1)『まるめろ奨学金』制度

・将来、「医療・福祉分野で活躍したい。」と考えている学生を対象とした奨学金制度。
・コースは、専門コースと一般コースの2つで、卒業後に社会福祉法人青森社会福祉振興団で一定の期間働くことで返済が免除される。

2)職員による職員のための議会「みちのく議会」の発足

・議会の目的は、「働きやすい施設環境を育むために、職員が主体となって議会を作り、議論を行う。」「現場の職員の要望や業務に対する新しいアイディアを吸上げる。」、「風通しの良い職場づくりで、就業意欲を改善に繋げる。」。
・議員の任期は2年(2016年6月1日~208年5月31日)で、議員は9名。全職種(介護職員・医療職員・相談員・フード職員・事務員・管理員・3地区)から、選挙で選出されていた。
以上