千田透の時代を読む視点

「これまで以上に社福の存在意義を示してもらいたい」

シルバー産業新聞2017年1月10日号

 

 社会福祉法の一部改正により、今年4月から社会福祉法人制度が大きく変わる。社会福祉法人においては、しっかりと準備をしてもらいたいし、行政については円滑に準備が行えるよう、十分に支援していく必要があるだろう。
今回の見直しで特にポイントとなるのは、「経営組織のガバナンスの強化」と「財政規律の強化」であろう。
「経営組織のガバナンスの強化」では、▽議決機関としての評議委員会を必置▽役員・理事会・評議委員会の権限・責任にかかる既定の整備▽親族などの理事等への選任の制限▽一定規模以上の法人への会計監査人の導入――などの改革が行われる。
 この中で評議員会は、法人運営の基本ルール・体制を決定するとともに役員等の選任・解任等を通じ、法人運営を監督する役割を果たす。これまでは、理事会に対するけん制機能が働きにくいとされていたが、今後は必置の議決機関とし、評議員の選任・解任を理事会で行うことをできなくしたことで、理事会に対するけん制機能を持つ機関として位置付けられている。
 評議員の数については、理事の数を超える数とされている。理事は6名以上とされているので、評議員は7名以上必要となる。ただし、一定の事業規模を超えない法人については、施行から3年間は評議員の数を4名以上とする経過措置が設けられている。
 評議員の確保に関しては、自治体や社会福祉協議会が、その役割に応じた支援や取り組みを行うよう国の通知では求められている。そのため、評議員の候補となる人材の情報などを提供する役割などが求められることになるだろう。
 評議員に関しては、定款に定めておくべきことが多岐に渡るため、今のうちから必要な準備を進めておく必要がある。
 一方、「財政規律の強化」では、▽役員報酬基準の作成と公表▽役員等への特別な利益供与の禁止▽社会福祉充実残高の明確化――などが主な見直し事項となっている。
 この中で、社会福祉充実残高の明確化では、いわゆる内部留保を明確にするため、「活用可能な財産」から「事業継続に必要な財産」を差し引いたものを「社会福祉充実残高」として、社会福祉事業や公益事業の実施費用に充てることになった。
 2016年度の決算で、「社会福祉充実残高」が生じる法人は、6月末までに社会福祉事業や公益事業を実施するための社会福祉充実計画の申請を行わなければならないため、「社会福祉充実残高」がどの程度の額になるのか予測し、必要な準備を進めておく必要あるだろう。
 社会福祉法人は、これまで地域のニーズに応え、信頼を勝ち得てきた。現在は4月に向けた準備や対応で苦労があると思うが、今回の改革を機に、これまで以上に社会福祉の担い手として、その存在意義を示してもらいたい。