千田透の時代を読む視点

混合介護、安心して利用できる環境づくりが大事

シルバー産業新聞2017年3月10日号



2月10日に開かれた政府の国家戦略特別区域会議で、東京都が介護保険サービスと介護保険外サービスを一体的に提供する「混合介護」の特区提案をした。具体的には豊島区と連携し、2018年度のモデル事業開始を目指し、準備を進めるとしている。
 個人的には、混合介護を広げていくことには賛成の立場だが、そのためには、どういったものを混合介護と呼ぶのか、保険給付される部分とそうでない部分をどうやって明確に区分けするのかなど、きちんと規定していく作業が必要になる。
 そもそも介護保険制度では、医療保険制度とは異なり、指定事業所が保険内サービスと保険外サービを一体的に提供することは、可能になっている。ただ、具体的な保険外サービスの例として、国が示しているのは2000年11月16日に発出された厚生省老人保健福祉局振興課長通知「指定訪問介護事業所の事業運営等の取扱等について」の中で、いくつか紹介されているだけである。
具体的には、保険給付範囲外のサービスに該当する事例を、大きく①「直接本人の援助」に該当しない行為②「日常生活の援助」に該当しない行為――の2つに規定し、①の場合は▽利用者以外のものに係る洗濯、調理、買い物、布団干し▽主として利用者が使用する居室等以外の掃除▽来客の応接(お茶・食事の手配等)▽自家用車の洗車、清掃等。
②では▽草むしり▽草木の水やり▽犬の散歩等ペットの世話▽家具・電気器具等の移動、修繕、模様替え▽大掃除、窓のガラス拭き、床のワックスがけ▽植木の剪定等の園芸▽正月、節句等のために特別な手間をかけておこなう調理――などを例として規定している。
保険外サービスの料金についても、「保険内サービスと保険外サービスの料金の間に不合理な差額が生じないようにしなければならない」旨を運営基準で規定しているだけである。
 混合介護を広めていこうとするのであれば、この辺りの規定を見直し、利用者や事業者がともに安心してサービスを利用・提供できる環境づくりを進めていくことが大事だ。
 訪問看護などの医療系サービスや施設系サービスの場合だと、保険内と保険外でサービス内容を区分けするのが難しい部分もある。そこはサービスごとに馴染む、馴染まないを判断していく必要もあるだろう。
混合介護を広めていく際は、判断能力の低下した人が高い価格で契約させられるケースや、所得の高い人だけが十分なサービスを受けられる仕組みとならないよう、慎重に進めていく必要がある。現在、保険給付されている範囲が、保険外サービスになるような形の混合介護であってはならいことは、言うまでもない。