千田透の時代を読む視点

3割負担、誰もがサービスを受けられる仕組みを

シルバー産業新聞2017年5月10日号

 


「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」が衆議院を通過した。参議院での審議を経て、今月中にも成立する見通しだ。
同法案には、保険者機能の強化や利用者負担の見直し策が盛り込まれており、地域包括ケアの実現とともに、高齢者に応分の負担を求め、制度の持続可能性を高めていく考えだ。
この中で、利用者負担の見直しについては、18年8月から、年収が340万円以上の人が3割に引き上げられる見通しになっている。
そもそも利用者負担については、介護保険創設時は1割だったものが、15年8月から一定以上所得のある人は2割となった。
その判定は、合計所得金額が160万円で線引きが行われている。ただ、合計所得金額が160万円以上でも、実際の収入が280万円に満たないケースや、同一世帯の65 歳以上の人の「年金収入とその他の合計所得金額」の合計が、単身で280万円、2人以上の世帯で346万円未満の場合は、1割負担とした。
今回の見直しでは、現役並みの所得がある人については、負担割合を3割に引き上げることになる。
具体的な基準については、法案成立後に政省令で定めることとされているが、厚労省案では、合計所得金額が220万円で線引きしている。
ただし、合計所得金額が220万円以上であっても、実際の収入が340万円に満たないケースや、同一世帯の65 歳以上の人の「年金収入とその他の合計所得金額」の合計が、単身で340万円、2人以上の世帯で463万円未満の場合は、2割負担とする考えが示されている。
3割負担の対象となるのは、比較的高収入な人たちに限定しているが、本当にそれが負担可能かどうかについては、国会において、もっと議論すべきであろう。
今でも、費用負担ができず、限られたサービスしか利用しないということが現場では起きている。
今回の見直しで、3割負担となる多くの人が、高額介護サービス費の上限である4万4400円で頭打ちとなるため、今後、さらにその上限の引き上げが求められることも予想される。
公的保険である以上、高所得者しか十分なサービスが受けられないような制度とならないよう、誰もがきっちりとサービスを受けられる仕組みを担保していくべきであろう。
負担が重いため、必要なサービスを控えるということになれば、政府が目指す自立支援介護にも繋がらないはずである。